銀行の検査とは?
検査といっても、視力検査や体力測定をするわけではありません。
銀行の検査・あるいは監査とは大きく分けて2つあります。
1.内部監査
銀行には、監査部という部署があります。同じく池井戸潤さん原作の「花咲舞が黙ってない」の主人公は、都市銀行の監査部所属という設定でしたね。
銀行員がお金を盗んだり、取引先とつるんで悪いことをしていないかチェック。業務が適正に行われているかを点検します。
各支店それぞれ一年に一回、3日から一週間ほどの監査となる場合が多いです。
前もって予告があったり、抜き打ちで1日だけ来たりと色々ですね。
まあ、身内の監査なので、若干甘めの部分はあります。
2.金融庁検査
昔は大蔵省が銀行を管轄していたので、「大蔵省の検査」をとって銀行用語で「クラケン」と言ったりします。
金融庁も忙しいので、すべての銀行の支店に検査が入るわけではありません。
ひとつの銀行で、1店舗ほど、抜き打ちで入ります。みせしめってやつですね。
というわけで選ばれちゃった店は大変!
まさに銀行という看板をかけての大勝負!
国家権力を振りかざしての検査ですので、容赦ないです。
うまく乗り切れば支店長の評価は上がりますが、失敗しようものなら左遷もありえます。
業務改善命令、業務停止命令などがでれば、悪いウワサが広まり銀行も大打撃となりますからね。
金融庁検査は突然に……
朝8時頃銀行に出社すると、見慣れない黒いスーツの面々が支店内をウロウロしている。
緊張した面持ちの支店長。
目配せしあう同僚たち。
いつもの通り机に手をかけて仕事の準備をしようとすると
「勝手にさわるな!」の声。
その後、金融庁の検査官立会のもと、ひとりひとり机の引き出しをチェックされます。
引き出しにお菓子が入っていて「こんなに仕事に関係ないものが入っていていいんですか?」
と小言を言われたり。
各自のロッカーも、不適切な書類を隠してないか、調査されます。
そのあとは、支店の会議室を独占して、言われた資料を運び込んでの徹底チェック。
ん……思い出すだけで気分が悪くなってきたな。
「〇〇銀行さんの内部管理体制はいったいどうなっているんですか?」
とネチネチいびられたこともありました。
検査って事前にわからないの?
銀行側からするとこんなにもめんどくさい、入られたら終わりな金融検査。
なんとか、事前に察知する方法はないのでしょうか?
ひとつは、金融庁のお役人と仲良くなっておいて、情報のおこぼれをもらう。
各銀行には金融庁担当の職員がいて、情報を仕入れる活動をしています。なんだかニンジャみたいですね(笑)お役人との人脈を活かすために高学歴な職員が多いです。金融庁担当は出世コースのひとつですな。
接待とか……今でもあるのかな。
もう一つは変わった方法で、ホテルから情報を仕入れるというもの。
検査官は遠方からくる場合が多く(東京とか大阪から)。検査のためにホテルを取ります。
宿泊先が銀行の取引先だと「◯月◯日に金融庁で何名予約ありましたよ」という情報がもらえます。
これ、まさにグッジョブ!
まあ金融庁も察知したのか、最近では個人名で予約するようで。
まるでミシュランガイドの覆面調査みたいですね(笑)
書類の疎開はあるのか?
半沢直樹でのワンシーン。
見られたらヤバイ書類を段ボールにつめて、奥さんの実家へ疎開……。
そんなことが実際にあるのか?
ありまーーーす(笑)。(以前はありました)
見られたらヤバイ書類って言っても僕らも別にガッツリ悪いことをしているわけではなくて。
銀行員も人間なんですよ。ミスするんですよ。
書類にハンコ1つ漏れてるけど、あとで補完することを条件にとりあえず融資したり。
決算書に少し不備があるけど、長年の取引先との付き合いもあるし、もらうのが延び延びになってたり。
そういう所を、検査官は的確についてきます!
まあ、銀行員が過剰反応しているという点もあるのでしょうけど。
ある店では、金融検査がありそうだという情報を聞くと、見られたらグレーな書類を段ボールにつめて支店長の家に疎開させてました。
追い詰められて辞めちゃった後輩も
僕の一個下の後輩にタカダ(仮名)というヤツがいました。
ちょうど銀行の投資信託販売が盛んになってきた頃。
我々現場の職員にも、徐々に本格的なノルマが課せられていました。
そのころは銀行もあんまりノウハウがなかったので、まあぶっちゃけ書類の漏れがあったり、面接記録に不備があったりしてたんですよ。
そこを、検査官につつかれてしまった。
それはタカダが足繁く自宅に通って、ようやく契約してもらった初老の男性のお客さんでした。
きまじめで人当たりがよかったタカダくん。
特にお客さんからクレームがあったわけではないのに、面接記録に不備があったみたいで。
彼は何回も、近畿財務局に呼ばれてましたね。
支店長からは「何をやってるんだ! なんとかして乗り切れ!」(検査でバッテンをくらうと、支店長のキャリアにも影響するため)。
銀行と役所との板挟み。
そんな多忙な中でも、通常の仕事をこなさなければならない。
地域を豊かにする。お客さんのために貢献する。
そう信じて、銀行に入ったはずなのに……。
思うところがあったのでしょう。
半年後、彼は退職届を出しました。
その後は地元のメーカーに就職して、結婚もして子どもも生まれて元気でやっているようです。
市民を代表して権力を行使する金融庁。
そのチカラは、世のため人のために使われるべきもの。
銀行員を追い詰めるのが、仕事ではないと思うのですが……。
2018年1月、「金融監督から金融育成へ」をスローガンに金融庁は大きく方針を転換したとの発表がありました。
健全な金融システムをつくるための検査、そうなることを祈るばかりです。
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