第6回 うみのまぐろさん

第6回は、うみのまぐろさんです。

投稿サイト「小説家になろう」や「エブリスタ」で活躍されておられる作家さんです。民俗学や死者の思念など不思議なものを題材にしたお話をよく書かれています。文章力が高く、読み手の心を鋭くえぐってくるエッジの効いた作品に定評のある方です。

大海原の回遊魚の深海世界は、ミステリアスにどこまでも広がっていく

『聲寄せ少女は死者を唄う』

<あらすじ>3月、高校が卒業式の準備で騒がしさを増す頃、死者の聲を寄せることのできる少女、砂川こよりは満開の桜の下で首つり自殺をした女性の霊と出会う。

聲寄せはしない。そう決めていたこよりは、これをきっかけに霊たちが巻き起こす不思議な事件に次々と巻き込まれ――。

自動筆記、念写、夢見に幽霊?不思議な女の子たちがおりなすライトホラーノベル。……とはいったもののホラーではなく伝奇小説です。

講談社メフィスト賞2016応募作品 『座談会にはもう少しだったけど、印象に残った作品』として書評をいただきました。

 

公募作品というヤツですな。舞台や登場人物が鋭く作り込まれている気がいたします。

私も一作目を拝読しましたが、特に怖いといったものはなかったです。(ちなみにうたのはハッピーエンド大好物で、ホラーがニガテです)どちらかというとミステリアスなヒューマンドラマという分類になるでしょうか。

主要な登場人物が女子学生ということもあり、優しくそしてほの哀しいような作品に仕上がっています。様々な想いを少女達を通して読者に訴えかけてくる死者の声、それは時に哀しくそして時にあたたかく読み手の我々の心を揺さぶってきます。

また今回お借りしたイラストは全て、安藤ゆいさんというイラストレーターの方が描かれております。優しいタッチの素敵なイラストですね。

女子高校生が織りなす、ゆるふわ飯テロストーリー

もう一つ、ご紹介。

『トーストは3枚切りで朝食を』

<あらすじ>大滝このみは三鷹女子大学附属高校に通う高校2年生。
兄が他界したため、兄の奥さんであったお義姉ちゃん、千春さんと一緒に暮らしている。
特に不満もない高校生活だけど、片思い相手のサッカー部の男子、藤原祐樹君がスレンダーな女の子が好みだと耳にした。

一念発起、このみはダイエットを思い立つのだけれど、親友のりんちゃんはそれは無理じゃねとため息をついた。
このみの実家、大滝家には、ご飯をたくさん食べなければいけない家訓があったのである――。
いつかきっとちょっとほっこりする、女子高生恋愛グルメコメディです。

少女漫画テイストで、意中の人との距離が少しずつ縮まっていく(のかな……?)様子や、体型も気にしちゃうけど、美味しいものも食べたい! という思春期の女の子の感情が柔らかいタッチで描かれています。

そして、この作品は飯テロです! 「女子高生が一人でラーメンを食べるには」、「思春期の義妹にすき焼きを食べてもらうには」、「好きな人に手作りクッキーを渡したい」などなど……サブタイトルからすでに食欲をそそってきます。これを書いている最中にも何やらお腹が空いてまいりました(笑)

三鷹女子大学付属高校が舞台となっておりますので、先程の『聲寄せ少女は死者を唄う』に出てきた人物も登場したりと、そんなところもファンにはたまらない仕上がりになっております。

 

短刀が魂をブッ刺してくるような衝撃をあなたに

そして、正直、この作品を紹介するかどうか悩みました。

私自身この小説をうまく表現する術を持たないからです。ここまで紹介文に悩んだ作品は初めてございます。

女性が短刀を腰にギュッと構えて体ごとぶつかってくるようなそんな作品……かな。ブッ刺されたい方はぜひ読んで下さい。

でも理屈抜きで名作だと思うし、読後は硬い床の上に転がされ、流れ行く自分の血を薄れ行く意識で眺めながらも「刺されてよかったな……」というほのかな思いが残る。(紹介するためにもう二回読んだけどうまく表現できん……)

だからこそ多くの人に読んでもらいたいので、紹介させていだだきますm(_ _)m 感想欄も合わせて読むと、より深く物語に浸ることができると思います。

『神無月のウソ』

<あらすじ>私はあの日、夫や息子、娘を捨てて本を燃やした。私の大好きな、大好きな本たちだった。
この世の笑顔を体現するため、私たちはすり減っていく。そしてそんな幸せのために、十月は私たちにウソをつかせるのだ。
私は、ただ私を薄めるための強いお酒が欲しい。

※少しきわどい表現があったり、もしかしたら読むのがつらくなる方がおられるかもしれません。
でもきっと世界はキラキラとした希望に満ちています。

 

続編(と明言はされておりませんが……)、同じシリーズの『雪と修羅』 という作品もありますぞ。

うみのまぐろさんへのインタビュー

では、うみのまぐろさんへのインタビューをご紹介します。

■創作するようになったキッカケ

創作をするようになったのはだいぶ昔のことなので、きっかけはあまり覚えていません。が、子供のころから何かを作るのは好きだったように思います。小説を書き始めたのは中学1年生のころです。海に住んでいたまぐろの上をやまなしが通りすぎて行って、ざぶんと音がした後に、お兄さんが「クラムボンは死んだ」と言ったのが始まりです。

■どんなことを考えながら創作していますか?

「死者のことば」というテーマを、いろいろな角度から書いていきたいです。主題を伝えるために、熱かったり冷たかったりする文章の温度感はこだわりポイントです。読んで下さった方々がそれで感じてくださったことを大事にしたいです。

■今後の夢、野望など

好きなことをして生きていきたいので、小説でご飯が食べられるようになりたいです。

 

おおっ! ということはまぐろさんの名を冠した本が店頭に並ぶ……なんてこともあったり! そう考えるととても楽しみですねえ。

ちなみにまぐろさんの好きなものはお酒で、荒ぶっているときはロゼかレモンチエッロか日本酒などを与えると大人しくなるそうです。

うみのまぐろさん、ありがとうございました!

うみのまぐろさんTwitter(@uminomagu 

ABOUTこの記事をかいた人

ファンタジスタ! うたの

クリエイター達を発信して、世の中をもっと元気にしたい! やりたい!と思ったことは取りあえず飛びつく関西在住の三十代男子です。 WEBで恋愛小説書いてます@小説家になろう 『歌姫と銀行員』 デジタルイラスト修行中/ツイキャス・nana/京都観光ガイド/ 本業は場末の銀行員